NY百花繚乱 - Dudley と Midnight

 私がロバートと出会った1998年に彼は大きなスコティッシュ、ディアハウンド犬のダッドリー(雄)を飼ってました。大きな犬で馬のポニーほどあるかと思えるぐらいの大きさです。おそらく日本では数頭しか飼われていないと思います。

時々大きな珍しい犬がうろついているのに私も気付いていて一度観察したことがあります。その時その大きな犬は店の前のストリートを渡るのにちゃんと法令を遵守し左右を確認してから渡っていたので私はいたく感心しました。ある日店の前に大きな犬のフンを見つけたので私はきっとあの犬の仕業に違い無いと思ってました。しばらくしてロバートが店に入ってきたので私は彼が飼い主だと分かると文句を言いました(ロバートとの出会いの経緯を語ると千夜一夜物語になるので割愛)。とにかく目立つ犬なのでしばしば人が質問してきます。一度ABC放送の看板アンカーだった故ピーター、ジェニング氏(2001年のSept. 11の時のアンカー)が車を止めてロバートに何という種類の犬かと聞かれたそうです。氏は当時隣り街のブリッジハンプトンにサマーハウスを持っていました。

ダッドリーのことを思い出すと私の涙腺はすぐ緩んできて涙が自然に出てくるので余り詳しく伝えるのは辛すぎます。彼は2001年4月29日に身罷れました。あの日私が店に行こうとしたらダッドリーは起き上がれ無いくらい衰弱していたのに私がドライブウェイを下って下に降りてふとバックミラーを見たらあのダッドリーが50mはあるドライブウェイの坂の上で私を見送っていたのです。それが生きている彼の姿を見た最後でした。私は友人から魚を貰ってダッドリーに食べさせようとしたのですがすでに手遅れでした。店から戻ったらもうダッドリーは死んでいました。悲しみは後からじわじわとやってきます。その時は私は冷静だったのでロバートにすぐにダッドリーが大好きだったオーシャンへ行って埋葬しようと言いました。ロバートはダッドリーの名前が刺繍された大きな円形のベッドごとダッドリーを抱きかかえ私はスコップを持ってオーシャンに行きました。砂浜の小高くなったところを1mほど掘ってダッドリーを埋めました。しかしあれから10年も経たずにそのオーシャンに行ったらその小山はすっかり無くなってました。ダッドリーの骨と首輪に下げた500円玉ほどの金属に刻印された名前と電話番号はどこへ行ったのか、とそこへ行く度に思い出すのです。

ダッドリーに可哀想な死なせ方をしたので私はロバートに今後一切犬を飼うな、と宣告しました。理由は飼い主としての責任能力が無いからです。しかしある日私がNYのアパートから戻ったら黒い犬がいました。2005年の4月18日の真夜中近くロバートが車を運転していたら何か黒いものが道路を横切ったそうです。それがミッドナイトでした。獣医に見せたところ年齢は1才〜1才半だと言われました。首輪をしていましたが迷い犬だと思ってしばらく様子を見ておりましたが飼い主が現れなかったのでたぶん捨てられたのでしょう。大人しい子で全然吠えません。雑種の雌で中型犬です。

ロバートは食事中に犬がテーブルの側に来るのをとても嫌がるのですがミッドナイトは決して近寄ろうとはしないで何時も2−3m先離れたところで大人しくじっとしています。私は番犬としてもこんなに大人しい子では役に立たないと思っていたのですがArts of Pacific Asia Showの時に私のアパートにロバートと私とミッドナイトが寝ていたら突然夜中にミッドナイトが激しく吠え出し私はビックリして飛び起きました。ロバートによると真夜中に廊下を誰かが歩いていたそうです。それで私はすっかり彼女を見直しました。ミッドナイトの大きさはダッドリーの半分も無いぐらいなのですが彼女は3匹も鹿を殺しました。最初の一匹はミッドナイトが口の周りを血だらけにして戻ってきたのでロバートが林の中を見に行ったら鹿が死んでました。二匹目は分かりませんがその時も口の周りを赤く染めて帰ってきたので殺したに違いありません。三匹目は私の目の前で鹿と犬の死闘が繰り広げられて、それはもう完全に野生の世界でした。鹿は断末魔の声をあげるし、ミッドナイトは激しく吠えまくるし辺りの空気が震撼するほどでした(ちなみにダッドリーはディアハンターなのに一匹も仕留めたことがありませんでした)。

いつもいつも散歩に連れて行ってもらうのをじっと安楽椅子に横たわりながら私が少しでも外に出かける素振りを感じると安楽椅子からのっそりと降りてくるのです。いちどサグハーバーのヘブンズビーチで夕方の5時過ぎにロバートとミッドナイトが車の外に出ていたら向こうの方角から大きなシェパードが二匹やって来てミッドナイトを囲みそのうちの一匹がミッドナイトの左腰の辺りに噛みつきました。私は車の中でその様子を見ていたのですが飼い主のカップルの名前も電話番号も聞かずロバートはカップルを帰したのです。私が見たら傷口が大きくえぐれて皮が剥がれているのです。私はロバートを激しく非難してすぐに獣医のところへ連れて行け、と言っても全く彼は何もしません。ハウンド犬のように胴回りが細くなっているので抗生物質のクリームを塗り腹巻のようなものを作って何度も巻くのですがすぐに緩くなってしまいます。あれこれいろいろ試していちばん効果があったのはサランラップを巻くことでした。1週間もすれば傷口が徐々に小さくなってきたので私もやっと安心しましたが、あのシェパードを飼っていたカップルは他の犬の飼い主から5000ドルの賠償金を払わされたと噂で聞きました。ミッドナイトは本当に要求をしない子だったのでそれが今でもとても不憫でならないのです。

私はもう絶世の美男が横をすれ違っても興味無いですが犬だと子犬であろうと老犬であろうと見かけると必ず執拗な視線で追いかけるのが習い性になってしまいました。私は自分だけの犬、愛玩してやまない犬、犬の目線で暮らしたいと切に願っているのです。

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Dudleyと桜の咲く頃

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     2005年5月

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     鹿を監視するミッドナイト 

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EECO FARMにて 

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ストリートで見かけた生後8週間目のミラーちゃん、そのあまりの可愛さにキッドナップの言葉が一瞬頭をよぎりました。