NY百花繚乱 - ハナミズキ

ハナミズキはNY州の州花です。英語名でDogwoodと言う呼び名ではなはだ風情に欠ける名前であります。近年めっきりとその木が少なくなってきており6月になると必ず咲く白いお星さまか金平糖のような可憐な花を咲かせるマウンテンローレルもめっきり少なくなってしまいました。

あれは5月の半ばでした。1982年の9月から翌年の5月までウォーターフロントの一軒家を借りておりました。避暑地では夏のシーズンが稼ぎ時になるので夏が終わるとホテルも貸し別荘も値段が大幅に下がるのです。確か350ドルで大きな家を借りていました。庭のデッキからボートが漕ぎ出せるような素晴らしい環境でしたが、私は異国でそれも友達も誰も居ないところで冬のシーズンそれも骨まで凍るような生まれて初めて経験する寒さに怯えておりました。自分の意思で日本を後にしたのですから誰も責めることは出来ません。お正月に思い切って母に電話しました。すると父が軽い脳梗塞で倒れて入院したと言うのです。私はそれを聞いて電話を切った後、自分を責めてまた泣きました。それでも長い冬がようやく終わり凍っていた海も溶け出し初めての春が巡ってきました。

そうあれは確か5月の半ば、私はローカルの人が良く通るNoyac Roadを車で走っていた時です。ハナミズキがまるで道路を覆うように真っ白なトンネルとなってあたかも数百万のモンシロチョウが舞っているかのような光景に思わず目を奪われました。”貴女をずっと待っていたんですよ”と言うメッセージを告げているかのようでした。その瞬間、私はしみじみ”自分がここに在る”ことの喜びが心の底から沸き上げってきて涙が滲んできました。そしてはたと気付いたのです、ずっと忘れていた幼かった頃の夢を。私はずっと船乗りになっていろんな外国を巡りたいと思っていた頃の夢を、今私はそれを実現しているではないかと。二重の喜びに体全身を包まれて私は初めて長くて暗かった冬からやっと抜け出すことが出来ました。

後で母から聞いたのですが父が倒れた時に父は私に知らせるな、とそう母に伝えていたそうです。それを聞いた時私は生まれて初めて父の愛情を感じました。

 

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